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業界の革新者 21世紀を担うニューリーダー 初号

金融と不動産業界において世界屈指の企業で采配を振り続けていた酒井氏が、これまでの経験をいかして観光業界へ参入。さまざまな経歴をもつ氏の仕事観、人生観についてうかがった。

聞き手:ビズニーズ コンテンツプロデューサー小島

酒井俊樹 Toshiki Sakai
1952(昭和27)年、京都府出身。京都大学卒業後、日本不動産銀行(現あおぞら銀行)入行。英国ケンブリッジ大学へ留学し、同大学院経済学部修士課程修了。帰国後は同行ロンドン副支店長、ニューヨーク副支店長を経て、1996(平成8)年にナショナーレネーデルランデン生命保険(現アイエヌジー生命保険)入社。アイエヌジープリンシバル・ペンションズに転籍して代表取締役副社長。エーエムピー証券の代表取締役社長、ケン・コーポレーションの理事、ケン不動産リースの常務取締役などを経て、2008年(平成20)年12月より野口観光株式会社の専務取締役に就任。
1 異業種からの参入のおもしろさ
2 緻密な分析と行動力で目標を達成
3 アルバイトに明け暮れた学生時代
4 大切なのは本物を見極める力を養うこと
5 座右の銘
6 編集後記
1 異業種からの参入のおもしろさ
 銀行マンとして第一線で活躍していた酒井氏は「当時は不動産の証券化に興味があった」という。世界屈指の企業で手腕を発揮していたが、2003(平成15)年ケン不動産リースの常務取締役を務めていたとき転機が訪れた。系列のケン・コーポレーションが札幌のルネッサンス サッポロ ホテルを取得し、経営の立て直しをするため総支配人に就任。
「金融や不動産には長く携わっておりましたが、観光やホテル業界は初めて関わったので、すべてが新鮮に感じました。ただ、銀行も不動産もサービス業ですから、お客さまへの姿勢や対応は同じだと思っています。北海道に訪れたのも初めてだったので、経済状態、環境、すべてにおいておどろくことがありました。とりわけ札幌市内とくに中心部に緑が少ないのは意外でした」

たしかに北海道といえば自然にあふれているイメージが強いだろうし、道外からの観光客が札幌に訪れたときは、酒井氏と同じような感想をもつのかもしれない。しかし、札幌市郊外や北海道のほかの地域は自然豊かで開放的である。
「札幌はビジネスも盛んですが、都市観光の要素も強く、札幌近郊の自然環境も取り入れることで、幅広いシティリゾートと癒しを提供できると思います。自然を守りながら、自然をいかしながら展開することが、北海道の観光業界のみならず経済においても大切なことだと思います」
 
2 緻密な分析と行動力で目標を達成
 数々の企業でリーダーを務めていた酒井氏が、仕事をするうえで心掛けていることは、ビジネスマンならずとも気になるところだ。
「まずは"対極的な戦略を練る"ことです。マクロとミクロの視点を見失わないようにすることでしょうか。観光という視点から見ても、日本の観光客だけではなく海外からの観光客も重要ですし、景気にも左右されます。結局、地元経済は日本経済、そして世界経済につながっていますからね。後身の指導においては他人に厳しくするなら、まず"自分が手本になる"よう自分を律すること。あと"選択肢の中で「あるべき」ものを選ぶ"こと。仕事だけではなく人生において、いくつも選択肢があるとき、それが困難でも「自分がどうありたいか」ということを重視して選択しています」

仕事の取り組みについてはSWOT分析※をさらに4分割して検討・実行しているそうだ。その内容は下記。

A:重要で、今すぐやるべきこと

B:重要だが、今じゃなくてもいいこと

C:重要ではないが、今すぐやるべきこと

D:重要だが、今やらなくてもいいこと
 「この4分割の中で"重要だが、今やらなくてもいいこと"がもっとも重要だと思っています。これにどれだけ費やせるかで、経営の根本を揺るがないものにできると思います。目の前の小川には水は静かに流れているけど、その先には滝があるものです。その滝(経営危機の例え)をいかに受け入れ、どう対応するか。それを乗り越えられないと致命傷になるのです。だから、今後訪れるリスクを視野に入れて検討や行動、そして決断することが大切」
SWOT分析と懸案事項をA4一枚の紙に書き出し、スケジュールを組み、更新しているそうだ。
※SWOT分析
目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおける、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) を評価するのに用いられる戦略計画ツールのひとつ。
3 アルバイトに明け暮れた学生時代
 生まれも育ちも京都で、父親は公務員だったが早くに亡くしたため、学生時代はアルバイトばかりしていたそうだ。
「学生時代はクラブやサークル活動もしませんでした。アルバイトは家庭教師。アルバイト先で自分は漫画雑誌を読んでいるようなちゃらんぽらんな学生でしたよ。非凡な才能もありませんでしたから、堅実な会社員になろうと。ただ、いろんなところへ行きたかったので就職は東京にしました」
京都大学卒業と同時に、日本不動産銀行(現あおぞら銀行)入行し、その研修制度で英国ケンブリッジ大学へ留学。イギリスでは3年間の学生生活を過ごした。当時を振り返ると「京都大学出身という特別意識はなかったつもりですが、鼻持ちならないヤツだったと思いますよ」と酒井氏は苦笑いをした。
 「留学したとき、アパートの大家さんが家族連れで来て、娘や息子を紹介するんです。日本ではありえないので不思議に思いましたね。しかも、窓にカーテンを取り付けてもらったときは、大家のオジサンが自分で作業するんです。それから1ヶ月ぐらいたったある日、大学のパーティに参加すると、大家のオジサンがガウンを着て会場にいるんですよ。そのとき大家が教授であることを知りました。自分の地位や肩書きをひけらかさない謙虚な姿勢には、感銘を受けました」
たとえば、商店主は客に商品を売るが、タクシーに乗れば商店主は客になり、レストランで食事をすれば客になる。イギリス留学を経験して「そのときの礼を尽くす大切さ」を実感したという。
4 大切なのは本物を見極める力を養うこと
 ビジネスマンの先輩として、人生の先輩として、30代・40代という働き盛りのミドルエイジにアドバイスをいただいた。
「本物志向であるべきだと思います。小手先で生きるのではなく、本物を追求することで創意工夫が生まれるのです。そのために、本物を見極める力を養うことが大切です。
人生は一生勉強ですから、本を読み、人と出会い、多くの経験、広い視野、すべて人生にいかされますし、人生を豊かにします。観光業界であれば、本物の食材、本物のホスピタリティ、本物の余暇を提供することで、本当の癒しを得られるのです」
 余談ながらに、ビジネスパートナーというか希望する人材についてきいてみると「志のある人と時間を共有したい」
と。100点の会社も人生もないから、やるべきことがあるし、それを見いだせる人が理想らしい。
さらに、酒井氏の今後の目標をきいてみたところ「65才までは100%仕事、75才までは仕事と余暇50%ずつ。75才からは100%余暇」と答えてくれた。
「これまでの人生に後悔はありませんが、「あのとき、あーしていれば!」という自責の念はあります。でも一生懸命頑張っていたときの選択ですからね。本当にしあわせな人生で、いままでのご縁に感謝しています。微力ながら恩返しをしていきたいと思っています」
5 座右の銘
日々是好日(にちにちこれこうじつ)
人生は雨の日も、風の日も、晴れの日もある。しかし、雨の日は雨の日を楽しみ、風の日には風の日を楽しみ、晴れの日は晴れの日を楽しむ。楽しむところは楽しみ、楽しみ無きところもまた無きところを楽しむ。つまり、どんな苦しい場面においても、これ好日結構なことですと、心から楽しめること。
6 編集後記  
 経歴を拝見したとき、世界を渡り歩いたヤリ手のビジネスマンという印象があり、お会いするまでは正直なところビビっていた。しかし、笑顔で出迎えてくれて、語り口も穏やかで、ユーモアにあふれた話に時間を忘れて聞き入ってしまいました。
ちなみに、酒井氏は音楽と読書が趣味で、とくに明治維新から昭和初期の歴史モノが好みとのこと。破壊と創造、日本独立の危機感をうかがえるのがおもしろいらしい。そして、坂本龍馬の生き方にはあこがれるそうだが、世界をまたにかけて活躍し、多くの人を魅了しているところは、酒井氏も似ている気がする。

 

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